ゲノムクリニックのホームページをご覧いただきありがとうございます。
代表を務めます医師の曽根原弘樹と申します。
「21世紀はゲノム医療の時代」と言われています。1990年にヒトゲノムの解読を目指して始まった国際ヒトゲノムプロジェクトは2003年に多くの国々、研究者の努力によって完了しました。当時のクリントン大統領の発表はとても印象的であり、私はその成果を発表したNature誌を買いに書店へ走ったことを記憶しております。
ヒトゲノム研究はそれから大きな発展を遂げ、配列はより正確さを増し、1000ゲノムプロジェクト, Exome Aggregation Consortiumなどのより多くの人々のゲノムを読む研究も行われました。さらに病気と遺伝子との関係も次々と明らかとなりデータベース化が進んでおります。数多くの疾患で遺伝子の変化を読み取ることにより、特に遺伝性疾患を中心として病気のリスクを予測できるようになってきています。最近ではハリウッドスターであるアンジェリーナ・ジョリーさんがご自身の遺伝子を解析された結果、乳癌・卵巣癌に将来かかる確率が高いと判断され、予防的に乳房切除術を行われたことが大きなニュースとなりました。こうした予測・治療が可能な遺伝性疾患について国際的に研究も進んでおり、ゲノム医療先進国であるアメリカでは予防・治療が可能な遺伝性疾患についてガイドラインも整備されはじめています。2015年にはオバマ大統領が国家戦略としてゲノム医療を後押していくことをPrecision Medicine宣言として発表しました。
DNA解読の技術面でも大きな進展がありました。ヒトゲノムプロジェクトが始まった当時の旧来型のDNAシーケンサーは正確ではあるものの、読み取り速度が遅く、1人分のゲノムを解読するためには数億円もの費用がかかってしまいました。そのため、ゲノム解析は巨大プロジェクトのみで可能であり、個人ゲノムを疾患発症予測に用いることは非現実的でした。しかし、2005年頃から研究レベルで急速に普及を始めた次世代シーケンサーにより、超並列的かつ高速にDNAを読み取ることが可能となり、1人あたりのゲノム解読のコストは数十万円程度に一気に下落しています。その結果、個人ゲノムを解析し一般の方がご自身の健康に活かす「ゲノム医療」の実現が現実的になってまいりました。
この間、私は医学・生命科学を学びゲノム医療をどのように実現すべきか考えてまいりました。受精卵の遺伝子解析研究、腫瘍のゲノム解析、さらには日々の診療でお会いする様々な疾患の患者様とのお話を通じて、ゲノム医療の実現可能性、期待の高まりを常に感じてきました。この度、次世代シーケンサーを用いた個人ゲノム解析を多くの方々にご提供することを目指し、千葉大学成果活用型ベンチャー「ゲノムクリニック」を設立いたしました。設立にあたっては、日本学術振興会博士課程教育リーディングプログラムから研究を活かした新規事業創出に関し多くのご支援をいただきました。千葉大学医学部産婦人科、遺伝子診療部の皆さまから多くのご助言をいただきました。また次世代の遺伝医療の専門家を育成するNGSDプロジェクトにも参加させていただき、遺伝医療に従事される多くのご専門の方々からのご助言をいただきながら、新しい遺伝医療を目指してまいります。運営にあたっては、千葉市産業振興財団、亥鼻イノベーションプラザから多大なご支援をいただき、千葉市Qiball(きぼーる)においてスタートすることができました。千葉におけるヘルスケア事業の発展にも貢献したいと考えております。
ゲノム医療はまだ始まったばかりの分野であり、大きな可能性と同時に課題もあります。また人のゲノム情報はとても重い意味を持つ情報であり、医師として社会的・倫理的価値観を意識して臨床・研究を行ってまいります。ゲノム医療という新領域の医学に真摯に取り組み、何よりも人々の健康に寄与することを第一に考え、進んでいきたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
平成29年 吉日
【経歴】
平成14年 筑波大学附属駒場中高等学校卒業
平成18年 筑波大学第二学群生物資源学類卒業
平成20年 東京大学大学院新領域創成科学研究科先端生命科学専攻修士号取得
平成25年 千葉大学医学部医学科(MD-PhDコース)卒業 医師免許取得
平成27年 川崎市立井田病院・川崎病院初期臨床研修修了
平成29年 千葉大学医学部附属病院産婦人科
平成30年 千葉大学医学部大学院先端医学薬学専攻博士号取得
日本産科婦人科学会所属
日本人類遺伝学会所属
日本生殖医学会所属
日本環境感染学会所属
【受賞・その他】
平成23年 第2回関東四大学研究医養成コンソーシアムポスター賞受賞
平成26年 日本学術振興会博士課程教育リーディングプログラム所属
平成27年 NGSDプロジェクト(次世代の難治性遺伝性疾患マネジメントを担うオールラウンド臨床遺伝専門医の育成)所属
平成29年 第58回日本卵子学会学術奨励賞受賞
アジア・アントレプレナーシップアワード2017特別賞受賞
ベンチャー・カップChiba 2017 グランプリ受賞
平成30年 千葉大学医学部リーディング大学院最優秀学生賞受賞
【発表・掲載】
Roles of the First and Second Round of DNA Replication in the Regulation of Zygotic Gene Activation in Mice.J. Reprod. Dev. 2008.
Analysis of Chromatin Structure in Oocytes by Chromatin Immunoprecipitation Assays Using Microinjected DNA Fragments. Society for the Study of Reproduction. Kailua-Kona, Hawaii, USA (May 2008)
ちばBasic & Clinical Research Conference 未分化胚細胞腫と多能性幹細胞の発現プロファイル解析による未分化状態維持機構の解析, 2012, 千葉大学医学部記念講堂
第139回神奈川県臨床外科医学会集談会 乳癌術後の放射線内分泌療法中に妊娠が判明した一例, 2013, 神奈川県医師会館
第32回日本産婦人科感染症学会 妊娠中に発症したA群β溶血性連鎖球菌毒素性ショック症候群の1例, 2015年5月23日, 栃木県総合文化センター
関東連合産婦人科学会 非瘢痕性子宮破裂、子宮内胎児死亡後に子宮全摘術を施行した1例, 2015年6月20日, 都市センターホテル
第1329回千葉医学会例会 卵巣奇形腫の分子遺伝学的解析, 2015年12月12日, 千葉市文化センター
千葉県産婦人科医学会平成27年度冬季学術講演会 若年性巨大卵巣奇形腫の2例, 2016年2月14日, 千葉県医師会館
第58回日本卵子学会 胚培養液を用いたミトコンドリアDNAの非侵襲的解析, 2017年6月2, 3日, 沖縄コンベンションセンター (学術奨励賞受賞)
International Symposium on Molecular Basis of Cancer Immunotherapy, The attempt to predict familial tumors
using personal genome analysis 2017年6月29日, 幕張メッセ国際会議場
第5回千葉未来開拓医学セミナー 婦人科疾患と血栓塞栓症, 2017年7月21日, 千葉市バーディーホテル
Genome Biz 2018, 個人ゲノム解析の医療実装化における現状と未来, 2018年6月23日, 渋谷区ヒカリエ
第27回千葉大学大学院薬学研究院薬友会生涯教育セミナー・宮木高明記念講演会, ゲノム医療の進歩, 2018年7月7日, 千葉大学薬学部120周年記念講堂
ゲノム医療の未来を語る, 遺伝性乳癌卵巣癌の予防・早期介入を目指した遺伝学的解析コスト低下に関する取り組み, 2018年9月4日, 千葉大学薬学部大会議室
日本人類遺伝学会第63回大会, Development of Noninvasive Preimplantation Genetic Diagnosis using Mitochondrial DNA in Embryo Culture Medium, 2018年10月10日-13日, パシフィコ横浜
次世代型ヘルスケアビジネス交流会, 個人ゲノム解析による疾患リスク判定, 2019年1月30日, 千葉市
信州大学医学部遺伝医学教室ランチョンセミナー, 千葉の紹介とNGS精度管理について, 2019年2月21日, 長野県松本市
2019アジア・アントレプレナーシップアワード・プレイベント, 当社のビジョンと柏の葉スマートシティにおける取り組み, 2019年7月30日, 東京ミッドタウン日比谷BASE-Q
臨床遺伝2019 in Supporo,次世代シーケンサーを用いたBRCA1, BRCA2解析における機種間差、Dry解析パイプラインの検討, 2019年8月2日-4日, 札幌市教育文化会館
第32回 日本臨床検査医学会 関東甲信越支部総会, 健常者コホートを対象としたActionable Variant探索の試み, 2020年9月19日, 千葉大学医学部附属病院(オンライン開催)
第56回 日本生殖医学会学術講演会, 胚培養液中Cell Free DNAを用いたPGT-Aの可能性, 2020年12月3-4日, オンライン開催
健常者コホートを対象としたActionable Variant探索の試み, 日本臨床検査医学会誌(旧:臨床病理), 2021年1月
Aneuploidy and sex concordance rate between cell-free DNA analysis from spent culture media of preimplantation embryo and DNA from whole embryo with respect to different morphological grading, Reproductive Medicine and Biology, 2022
Chiba University Leading Graduate School 9 th Winter Camp, WISE 2 nd Retreat, 2023, Chiba
第41回 日本受精着床学会学術講演会, シンポジウム「ポストPGT-A臨床研究, 非侵襲的着床前診断の可能性」, 2023年7月27-28日, 仙台国際センター